ソファーから転落
先日、入居者様がソファーから転落される事故がありました。特別養護老人ホームは終の棲家という特性もあり、ユニットケアを実施していれば、事故防止とQOLのバランスは常にテーマとなりうるものです。
普段、食席に座りっぱなしの入居者様や車いすに座りっぱなしの入居者様にとって、窓際の景色の良い、もしくはテレビの良く見えるソファーに座れることは少しでも喜んで頂ける支援として有効な支援ではないかと思います。
今回、座位から左側に転落してしまったという報告でした。

事故防止からみる視点
ソファーの座面の高さ、ひじ掛けの高さ、クッションの柔らかさ、前方にローテーブルなど転落防止措置があったか、靴はあっていたか、職員の見守りできる位置にソファーがあったか、などなど事故防止措置について考察してみること。
座面が柔らかすぎて立ち上がりが出来ない、足元周辺にマットレスなどを敷き移動困難にしているなど拘束につながる行為はなかったか考察してみること。
入居者様のADLは日々刻々と変化していきます。昨日の支援が今日も妥当かどうか。本日の入居者様の体調はどうなのか考察してみること。
入居者様が立ち上がると「危ないから立たないで」と声掛けをする介護スタッフがいるとすれば、抑制や制限、拘束になっているかもしれません。
合わせてアセスメントすることが大事です。
QOLからみる視点
入居者様がソファーに座ることをご自身が楽しまれているか、安楽に穏やかにすごされているか、内面について考察すること。
日当たり、視界に入る景色、香り、生活音など、ぜひ同じ位置に介護士が座ってみることで、どう感じるかも考察してみてください。
事故防止とQOLのバランス
特別養護老人ホームにおいてばかりでなく、多くの医療福祉サービスの大前提に「安全・安心」は第一であることに間違いはありません。ただ、終の棲家という特別養護老人ホームの特性を考えると、生活の継続、生活の質の向上と安全・安心は両方大事であって、その両立を維持するために個々のアセスメントはとても重要になってきます。
ユニットケアを遂行するためにも、一斉一律の支援でなく個々の入居者様としっかり向き合うことこそ、最大の事故防止となるはずです。

事故防止とQOL向上のために
- 安全性の確保: 施設内の通路や床にはすべりにくい素材を使い、手すりや滑り止めを設置することで転倒事故を防ぎます。また、照明や騒音も適切に管理し、安全で快適な環境を整えます。
- 介護スタッフの教育: 介護スタッフは、事故防止のための知識と技術を持っていることが重要です。定期的な研修やワークショップを実施し、最新の知識を身につけるよう努めましょう。
- 個別対応: 高齢者のニーズは個々に異なります。入居者様の健康状態や運動能力に合わせたケアプランを立て、個別に対応できるようにしましょう。
- コミュニケーションの促進: 高齢者が孤立しないよう、スタッフや他の入居者様とのコミュニケーションを促進します。グループ活動やイベントを通じて交流の機会を増やし、QOL向上につなげましょう。
- 心身の健康維持: 高齢者の心身の健康を維持するため、栄養バランスの良い食事や適度な運動を提供します。また、レクリエーションや趣味を楽しむ機会も提供し、心身ともに充実した生活が送れるようサポートしましょう。
- 緊急時対応: 事故が発生した際の対応計画を策定し、スタッフに周知徹底させます。また、緊急連絡先や事故対応などの情報を入居者様とも共有し、安心感を提供します。
- 家族との連携: ご家族と定期的に連絡を取り合い、入居者様の状況やニーズについて情報交換しましょう。ご家族との連携は入居者様のQOL向上にも寄与します。また、ご家族が関与するイベントや面会日を設けることで、入居者様とご家族の絆を維持・強化することができます。
- 居室の工夫: 入居者様が自分の居室でリラックスできる空間を提供することが重要です。個人の趣味や好みに合わせたインテリアや配置を行い、プライバシーを尊重しましょう。
- 環境整備: 清潔で整った環境は、入居者様の健康とQOLに寄与します。定期的な清掃や消毒を行い、清潔で快適な生活空間を維持しましょう。
- 意見・要望の受け入れ: 入居者様やご家族からの意見や要望を積極的に受け入れ、サービスの向上に努めましょう。定期的なアンケート調査や意見交換会を実施し、入居者様の満足度を高める取り組みを行いましょう。
これらの注意点を踏まえた上で、特別養護老人ホームでの支援に努めることで、事故防止とQOLの向上につながります。安全で快適な環境を提供することで、入居者様が穏やかで充実した生活を送ることができるようサポートしましょう。